ヒグラシは、日の出前と日暮れ、薄明かりの時間にだけ鳴く虫です。
これは、ある夏の早朝、午前四時の録音。カナカナという細い声が森いっぱいに満ちて、やがてそこへ、鳥の声がひとつ、またひとつまじってくる。ヒグラシと鳥と、朝へ向かう森。その数分を、切らずにそのまま持ち帰りました。
福島の里山、祖母の家のまわりで録った朝の音です。
効能をうたうものではありません。鳴っている音そのものが、休息の下地になるように。
澄んだ合唱だけを取り出し、途切れなく回るように仕立てました。流したまま、朝の下地に敷いておくための音。
早朝四時、ヒグラシの声にやがて鳥がまじり、森がゆっくり朝へ向かっていく数分を、そのまま。腰を据えて聴くための音。
目を閉じて流しても、何かをしながら小さく敷いておいても。朝の森の音が、その日の休息の下地になりますように。
──どうぞ、しばらく、朝の森に。